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無題 明日香 【2005/11/07 00:23:54】[返信][削除]
 委員長の号令で、先生への挨拶が行われる。
 5時間目の授業は現代国語。げんこく、と呼ばれるものだ。担当 の先生は授業を始める前に出席をとっていった。
「前田さくら・・・・は、病院だったな」
 つぶやいて、出席帖に何やら書き込む。続けて出席をとり続け、終わると教科書を開き、授業を始めた。
「で、さくらちゃんは?」
 亮は小声で麻紀に話し掛ける。ご丁寧に机に教科書をたてて、ガードしている。だが、この動作は無意味である事にたいていの人は気づいていない。壇上で立っている先生からは、いとも簡単に見抜けるのであった。
 現代国語を受け持つ笹原久信は、教師暦30年を持つベテランである。古き良き時代の不良たちから、今のキレやすい若者まで多岐にわたって生徒たちと向かい合ってきた。修羅場の数なら警察にも負けはしない。亮の行動などお見通しであった。
「穂積ーっ」
 決して大声ではないが、鋭い声が響いた。同時に、右手が動きその指先から白くひかる何かが飛んだ。
 白いその軌跡は、明確に亮の額を穿った。
 亮は額を抑え、教科書とともに机につっぷす。その机から、白いものがカタンと落ちた。それは、黒板に残っていた小さな白いチョークの残り端であった。
「クラスメートが気になるのは理解できるが、私語は慎むようにしろ。それでなくとも、お前は寝てるのが多いんだからな。たまには、まともに授業をうけておけ」
 床に落ちたチョークを拾いながら、笹原先生は言った。
 最早、伝説とされ、漫画の中にしか存在しないと言われるチョーク投げ。それは使いこなすただ一人の教師と言われる彼のその声は、言葉とはうらはらに優しい響きを秘めていた。
「それでは、授業を続ける」
 教卓に戻り、笹原は言った。付け加える事を忘れずに。
「前田さくらは、昼休みに少しケガをしたようなので大事をとって病院に行っただけだ。何かあれぱ連絡があるだろう。そうおおごとではないのでな。みんなには言わなかっただけだ」
 だったら、最初から言ってくれ。そう思ったのは、額を抑えた亮だけではないだろう。ベテランでも失敗はする、ということである。貧乏クジをひいた亮には悪いけど・・・。

無題 巴 真雪 【2005/06/10 22:21:18】[返信][削除]
「あれ? さくらちゃんは?」
 5時間目の本鈴が鳴る直前、亮が汗だくで戻ってきた。
「穂積。あんた、もうちょっと早く戻ってきなさいよ」
 麻紀は亮の問いには答えず、しょっぱなからそんな事を言った。
 麻紀は予鈴が鳴る前から席に着いていた。
 入学してからはずっとさくらや亮と一緒だったから、ちょっとした時間にどちらもいないと困ってしまう。
 それと、昼休み中の出来事を早く話したくて仕方がなかった。
「熱中していて、予鈴に気付かなかった」
 カバンから出したタオルで額を拭きながら、亮も席に着いた。
「何かあったの?」
 麻紀が亮に対して怒ってばかりなのは日常茶飯事だけれど、さくらがいないこともあって、自分のいない昼休み中に何かあった事を察知した。
「聞いてよ! さくらと一緒に沙苗先輩を見に行こうとしたら……」
 いがぐり頭がさくらにぶつかり、それが元でさくらが怪我をした事や、彼の無礼な態度を亮に話して聞かせた。
 麻紀は怒りからエキサイトして話していたが、本鈴が鳴って先生も現れ、話は中途半端に終わってしまった。

無題 巴 真雪 【2005/06/10 22:20:38】[返信][削除]
「いがぐり頭、折角伏せたのに……」
 最初に我に返った麻紀が呟いた言葉に、これまた他の三人は何の事だか分からなかった。

 さくらと麻紀は連れ立って教室へ向かい、さくらは1人、カバンを持って再び保健室へやって来た。
 その間に、昼休み終わりの予鈴が鳴った。
 既に矢坂は職員室から戻っており、どこかへ電話をしている。
 その間、さくらは手持ち無沙汰に保健室をキョロキョロしていた。
 器具や薬等はどれも分かりやすく且つ使いやすく置かれ、矢坂の使っている白い電話もピカピカ。
 床も顔が映りそうな程磨かれているようで、矢坂が神経質そうな感じに思えた。
 そんな事をぼんやり思っていると、
「あら、来てたのね。今病院に電話しておいたから、相澤くんに連れてってもらってね。ほら、相澤くん!」
 矢坂に呼ばれ、相澤はまた衝立の影から出てきた。
 今度はブレザーを着ている。
「では、行ってきます」
 相澤は矢坂にそう言い、さくらの右手に持っていたカバンを持って保健室を出た。
「ありがとうございました」
 さくらはペコっと軽く頭を下げながら矢坂に礼を言い、相澤の後に続いた。
 廊下に出ようとすると、
「どうぞ」
と、待っていた相澤が微笑む。
 まさかそんな所で待っているとは思わず、さくらは慌てて廊下に出たのであった。
 引き戸を閉めたのは、勿論相澤。
 今までに男子からそんな扱いを受けたことのないさくらは、高校生は大人だな……と、そんなことを思いながら相澤の後を歩いていた。

無題 田子猫 【2005/05/31 19:39:24】[返信][削除]
「あのう」
その時廊下から声がかかった
「はい?」
矢坂が振り向くと、背の低い、おかっぱ頭の女子が保健室に入ってきた。
「あ、悪いけど」
「いえ」
女子は矢坂の言葉を遮って
「あの、聞いたんですけど、佐柄がご迷惑をおかけしたみたいで…」
「佐柄?」
「イガグリ頭のひねくれ者です。佐柄が女子に乱暴を働いたって聞いて…」
「あ、違うの、ぶつかっただけ」
あわてて訂正するさくらに本当に申し訳なさそうな顔で
「ごめんなさい、許してやってくれませんか」
「あなたに謝られる筋合いはないわ」
麻紀が語気を荒げて言った。
「なんで自分で来ないのよ」
「ごめんなさい。まだ人の気持ちを学習できてないの」
「そもそもあなたは何でそいつのために謝るのよ?」
「幼馴染だから…佐柄は自分以外はみな敵だと思っているの。テストで100点取って成績が1番になることだけが両親から認められる条件だから…佐柄にとって佐柄をいじめる男子もバカにしていると信じている女子も、私ですら競争相手としか思ってないの…でも、佐柄がどんな奴でも、一人にしちゃいけないって思うの。だから佐柄がしたことは私が謝る。ごめんなさい」
女子は廊下を走り去った。
「おーい、廊下は走るなって…行っちゃった…」
保健室にいた一同はしばらく事態を呑み込めずに呆然としてしまった。

無題 明日香 【2005/05/27 19:01:11】[返信][削除]
「悪いわね、麻紀」
麻紀に肩をかしてもらって、保健室にさくらは足を向けた。
肩をかしてもらい、一息ついたところで、気持ちに余裕ができたのだろう。左肩がジンと痺れてきた。たいしたことはないと思っていたのだが、そうでもないようだ。
麻紀についてきてもらってよかった。
保健室に入る時に、さくらは改めて礼を言った。
「いいわよ。気にしなくて。先生」
ガラッと保健室の扉を開ける麻紀。入学して早々に訪れる事になった保健室は、薬品の匂いがうっすらとする特殊な空間であった。
「どうしたの」
机に向かっていた、白衣を身に纏った女性が振り向いた。養護教員であろう、その胸には小さなネームプレートがついていた。
矢坂、とある。
「教室の扉に肩をぶつけちゃって」
さくらが矢坂にすすめられるまま、向かい合う形で用意された椅子に座る。
「ふむ。肩は左肩?右肩?」
「左です」
矢坂はさくらの左手をと左肩に手を伸ばし、軽く動かしてみた。が、さくらの声から悲鳴が小さくもれた。慌てて手を放した矢坂はどんな風に痛むかかきいてみた。
「最初は何でもなかったんですけど、段々痺れるように痛くなってきて」
「原因は?ただ、ぶつけただけって感じじゃなさそうだけど」
矢坂はちらりと、傍らにいる麻紀に目を向ける。
「あなたは?その場に居合わせたの?」
問われて麻紀は、頷いた。そのまま、見たとおりの事を口にした。いがぐり頭の印象は一応、ふせておいてやる事にして。
「そう。随分と激しくぶつかったのね。ちょっと、失礼」
再度、矢坂はさくらの左肩をさすってみた。
痛みに顔を歪めるさくらに、矢坂は「ありゃりゃ」と口にして手をはなした。
「レントゲン、とった方がいいわね。脱臼はしてないと思うけど、
場合が場合だから。クラスを教えてくれる?担任の先生には私から伝えておくわ」
結構、大事になってきたな、と思うさくらと麻紀であった。
さくらのクラスを聞いた矢坂は、用紙にメモを記入し、麻紀には昼休みが終わるから教室に戻るよう指示し、さくらにはカバンを持って、また保健室に来るよう指示した。これから病院に行くというのである。自分は自分で、職員室に向かうために席をたつ。
「レントゲン、ですか」
「念のためよ。念のため。相澤くん、ちょっと留守にするからあとはよろしくね」
あいざわ、という名前を口にしてさくらと麻紀は初めて第三者がいた事に気づいた。
返事とともに出てきたのは、ブレザーを脱いだワイシャツ姿の男子だった。衝立の向こうのベッドにいたようだった。
「承知しました。保健委員も楽じゃないですねぇ」
「文句言わない。今まで、寝させてあげてたんだから」
「授業さぼってたわけじゃないんですけど。昼休みだけじゃないですか。だいたい、僕にも午後の授業があるんですよ」
「心配しない。あんたの担任にも話しておいてあげるから。この子の病院行きにつきそいなさい。カバン持ちで」
「じゃ、僕が今から彼女のクラスに寄ってカバンを持ちますよ」
「それじゃ、ここが留守になるでしょ」
「不在の札、かけておけばいいじゃないですか。どうせ職員室までの往復でしょう」
「その間に不審人物に入られたらどうするのよ。文句言わずに、留守番してなさい」
そんな問答の結果、相澤という男子は矢坂の言うとおりにする事になるのだった。
いったい、なんなのだろう。
漫才のような二人の会話を聞きながら、さくらと麻紀は首を傾げた。同時に、この二人の関係や相澤なる人物についても興味がわいてきたのだが。

無題 明日香 【2005/05/27 18:03:25】[返信][削除]
「失礼な奴……!」
麻紀はその後姿に思いっきり、嫌悪感を抱いた。ああいう奴が、自分をクールでかっこいいと思い込んでいたりするのだ。
「大丈夫?さくら」
気を取り直して、さくらに手をかして立ち直らせる。
さくらは、大丈夫よ、と声に出して麻紀の好意を有り難く受け止めた。
少々左肩が痛むが、たいしたことはないだろう。
「ありがと、麻紀。一応、保健室に行ってみる事にする」
「それがいいわ。結構、大きな音もしたし。ついてこうか?」
「大丈夫よ。一人で行けるから。バスケ部、見に行くんでしょ。後で行くから待っていて」
「そ、そう?」
さくらにそう言われると、麻紀の脳裏には沙苗先輩の雄姿が浮かぶ。つい顔がほころび、声がゆれるほどだ。
だが、ブンブンと顔を横にふって、せっかくの申し出を固辞することにした。バスケ部は逃げないが、さくらの保健室行きは今しかない。この先、さくらが保健室に行く事はないという訳ではないけども。
「いいわよ、そっちは。さくらの方が大事だから。さ、行きましょ」
そう言って、さくらに自分の肩をかす麻紀だった。

無題 田子猫 【2005/05/21 22:05:10】HomePage[返信][削除]
麻紀に続いて教室を出ようとしたとき、廊下を走ってきた男子がさくらにぶつかった。
「きゃっ」
鈍い音がした。
さくらはドアに左肩を激しくぶつけて座り込み、痛みで暫らくは声が出そうもなかった。
男子は弾き飛ばされるような格好で廊下に尻餅をついた。
いがぐり坊主頭のその男子は足もとの丸いフレームの眼鏡を拾ってかけると、ぼーっとした感じでさくらを見ていた。
「あんたっ」
口を開いたのは麻紀だった。
「人にぶつかっておいて、ごめんくらい言いなさいよっ!」
激昂する麻紀にその男子は
「それよりこの人を保健室に連れて行って診てもらった方がいいと判断するけど」
その容貌に不釣合いなほどの冷静で感情のこもらない声で言った。
「あんたねぇ!」
言いかけて、左肩を押さえて座り込んでいるさくらが目に入り、息を呑んだ。
男子は何事もなかったかのように立ち上がると
「保健室まで肩を貸そうか?」
感情のこもらない声でさくらに言った。
さくらが頭を振ると
「あ、そ」
そのまま立ち去ろうとした。
「あんた、何様のつもり?」
男子は麻紀に冷ややかな視線だけを残し、1組の方へ歩き去った。

無題 巴 真雪 【2005/05/19 19:44:05】[返信][削除]
「ねぇ、バスケも見に行かない?」
「えっ!?」
 ぼんやりとバスケ部部長の顔を浮かべていたさくらは、麻紀の突然の誘いに、必要以上に驚いた。
「そ、そんなに驚かなくても……」
 さくらの素っ頓狂な声に、麻紀も面食らった。
 不可抗力とはいえ、無意識に思い出した人を当てられたようで、さくらはバツが悪くなった。
 しかし、
「どうしてバスケなの?」
と、気を取り直して質問してみる。
 麻紀はテニス部入部をほぼ決めているし、先程までなんの部活の名称も出てこなかったから。
「沙苗先輩を見に行くの」
 語尾にハートマークでも付いていそうな感じだった。
「あんなにキレイで頭もいいらしいし、バスケもうまいんだよ。先輩のプレー姿を見てみたいと思ってね」
 麻紀は少々うっとり気味の表情をしていた。

無題 明里 【2005/05/17 23:50:05】[返信][削除]
部活紹介の翌日。
午前中の授業を終えたさくらは、麻紀と一緒にお弁当を食べていた。
話の内容は、今日から二週間ある見学期間にどの部活を見学するかということだ。テニス部は見に行くことにしていたけれど、他に特別気になる部活は出てこなかった。
早々とお弁当を食べ終わった穂積が教室を出て行こうとするのを見ながら、さくらは昨日のバスケ部部長を思い出した。

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